この記事はディスプレイの美しい(DPI-P3、Adobe RGB対応)ノートパソコンを探しているけれど、各社表記がバラバラで調べるのが大変という方にお勧めの記事になっています。
こんにちは。グラフィックデザイナーやビデオエディター、フォトグラファーの皆さんはどのようなパソコンを使っていますか?デスクトップ型パソコンであれば、色再現度の高いAppleのPro Display XDRやMicrosoftのSurface Studioなど徐々にクリエイター向けのパソコンが増えてきていますよね。
クリエイターの皆さんや、クリエイターを目指している方の中には、
という方や
という方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ディスプレイの美しさにフォーカスしたノートパソコン選びのポイントとお勧めのモバイルパソコンを紹介していきたいと思います。
こんな方におすすめ
- クリエイターやフォトグラファーにお勧めのノートパソコンの紹介
- ディスプレイの美しさの基準
ということで、詳しく見ていきましょう。
ディスプレイの美しさの基準:色域とは?
すでにクリエイターの方やフォトグラファーの方はご存じかと思いますが、そうでない方のために軽くディスプレイの色についてお話しします。
ディスプレイの美しさ、表現できる色の範囲の基準に色域というのがあります。色域とは私たち人間が認識可能な色の範囲(可視領域)の中で、さらに特定の色の範囲を定めたものです。カメラやスキャナ、ディスプレイなど再現できる色の範囲が異なるため、共通の基準が必要となり色域が決められています。
色域の規格は様々なものがありディスプレイ用とプリント用とでまた別の規格が存在します。ここでは主にディスプレイ用の規格について説明します。
ディスプレイ用の規格として、現在広く普及しているのがsRGB、Adobe RGB、そしてDisplay P3(DCI-P3)という規格です。
上の図を見ていただければわかると思いますが、sRGBは表現できる色の範囲が狭いのに対し、Adobe RGBやDisplay P3は非常に広い範囲の色を表現できることが分かります。
広く普及しているディスプレイの多くはこのsRGBを基準に作られていて、sRGBカバー率97%とかでも一般的に表示がキレイといわれるディスプレイになります。ノートパソコン向けなどではsRGBカバー率70%とかいうのも存在しますので、いかに自然な色を再現するのが難しいかがわかるかと思います。
先ほどの図から、sRGBよりもAdobe RGBやDisplay P3のほうが表現できる色の範囲が広いことが分かったかと思います。範囲が広ければ広いほど、より自然な色合いになります。最近、色がキレイといわれる有機ELテレビやAppleのiPhone 11 ProなどはAdobe RGBやDisplay P3を100%カバーしています(テレビはまた別の規格があるので厳密には異なる)。
sRGBカバー率100%でもきれいなのに、それよりも広いAdobe RGBやDisplay P3カバー率100%のディスプレイの登場で、ディスプレイ業界は大きく変化することになりました。
ということで、今回の記事はAdobe RGBカバー率100%、もしくはDisplay P3カバー率100%のノートパソコンを紹介していきたいと思います。
Adobe RGB・Display P3対応ノートパソコン
Adobe RGBとDisplay P3は厳密には異なりますが、ここではほぼ同等として扱わせていただきます。フォトグラファーやクリエイターでなくても、一度この美しいディスプレイを使ったら、もう通常のディスプレイには戻れなくなるでしょう。
クリエイターをターゲットに設計されたAcerのConceptD
日本ではエイサーは低価格帯のパソコンメーカーというイメージが強いですが、Acerはプロフェッショナルユーズにも対応しています。ここではConceptDシリーズ最廉価モデル(ConceptD 3)のスペックを載せておきます。これ以外にも、ConceptD 5、ConceptD 7などよりハイスペックなモデルもあるので興味のある方は調べてみてください。ConceptD 3の解像度はフルHDですが、上位モデルのConceptD 7は4K対応です。
ConceptD 3スペック
色域 | DCI-P3 100% (ΔE 2 未満) |
グラフィックス | GeForce GTX 1650 |
CPU | Core i7-9750H (11,540) |
メモリ | 32GB |
ストレージ | SSD 512GB |
薄さ | 23mm |
重量 | 2.15 Kg |
バッテリ駆動 | 10時間 |
その他 | 静音設計(40dBA未満) |
ConceptDのすごいところは、クリエイティブ作業に集中できるよう無駄が排除されている点です。パソコン本体は無駄を一切省き、ホワイトもしくはブラックのシンプルなボディに仕上がっています。それだけでなく、40dBA未満の静音設計で、静かな環境で作業に没頭することが可能です。
これだけ無駄を省き、静音設計にもかかわらず、スペックでは妥協していません。Intel最新第9世代のCPUを搭載し、グラフィックスボードもGeForce GTX 1650を積んでいます。ディスプレイに関しても単にDCI-P3に対応しているだけでなく、出荷時にしっかり色補正されているため、クリエイターにとっては必須な一台になっているのです。
これだけ高スペックなのに、外出先でも作業できるようバッテリ駆動時間は10時間となっています。
値段も20万円ちょっとから購入でき、ハイスペックなクリエイター向けパソコンとしてはリーズナブルに仕上がっています。
10万円台から買えるクリエイター向けパソコン」7:GIGABYTE AERO 15
ちょっとほかのパソコンと比較すると、スペック面で見劣りしてしまうのと、キーボードが英語配列という点を除けば、10万円台で購入できるクリエイター向けパソコンとしては最安値モデルになります。
GIGABYTE AERO 15は4K有機ELパネルを搭載しAdobe RGBカバー率100%、DCI-P3カバー率100%の高彩度のディスプレイを備えているクリエイター向けパソコンです。
GIGABYTE AERO 15スペック
色域 | Adobe RGB 100% / DCI-P3 100% |
グラフィックス | GeForce GTX 1650 |
CPU | Core i7-9750H (11,540) |
メモリ | 8GB |
ストレージ | SSD256GB |
薄さ | 18mm |
重量 | 2 Kg |
バッテリ駆動 | 8時間 |
その他 | 7.1チャンネルサラウンドシステム |
安心の日本メーカー:NEC Lavie VEGA 有機ELモデル
ここまで海外メーカーばかりでしたが、日本のメーカーも負けていません。NECは2020年1月にクリエイター向けパソコンとして、LAVIE VEGA有機ELモデルを発表しました。
このモデルはデザイナーやフォトグラファーをターゲットに設計されていて、色域はDCI-P3カバー率100%、さらにコントラストも驚きの10万対1を実現しています。また購入者にはAdobeのサブスクリプションサービス、Creative Croud フォトプランを1年間使用できるライセンスが付属しています。
値段は若干高めに感じますが、Adobeのサブスクリプションプランが付属すると考えると安いかもしれません。
LAVIE VEGA 有機ELモデルのスペック
色域 | DCI-P3 100% |
グラフィックス | GeForce GTX 1650 |
CPU | Core i7-9750H (11,540) |
メモリ | 16GB |
ストレージ | SSD 256GB |
薄さ | 18.3mm |
重量 | 1.9 Kg |
バッテリ駆動 | 10時間 |
その他 | Yamaha Audio Engine搭載 |
Japan Quality:富士通 FMV Lifebook AH
こちらはMade in Japanを標榜する富士通のノートパソコンです。クリエイター向けを明言はしていませんが、スペックから十分クリエイター用途に利用できるパソコンを発売しています。
こちらも色域はDCI-P3を100%カバーしており、NEC同様コントラスト比も驚異の100,000:1を実現しています。さらにVesa のTrue Black 500に対応しているため、深い黒色を表現することが可能な一台に仕上がっています。またベゼルレスといっても過言ではないぐらい液晶のふちが薄く作られており、政策作業に没頭することが可能です。
他のメーカーと比べると、値段が高めでバッテリ駆動時間も短く、グラボもCPU内臓のため見劣りしてしまいますが、なんといってもMade in Japanですので、品質は安心できます。
FMV Lifebook AH 有機ELモデルのスペック
色域 | DCI-P3 100% |
グラフィックス | CPU内臓 |
CPU | Core i7-9750H (11,540) |
メモリ | 8GB |
ストレージ | SSD 1TB |
薄さ | 27mm |
重量 | 2 Kg |
バッテリ駆動 | 4時間 |
その他 | Onkyo Speaker |
バッテリ長時間のバランスモデル:MSI Prestige 15
MSIの発売するPrestige 15は外出先で作業が多い方にお勧めの一台です。ここまで紹介してきたノートパソコンは最大でもバッテリ駆動が10時間でしたが、こちらのパソコンは最大16時間使用することができます。さらに15分の充電で2時間使用できるので、充電し忘れた!という時でもちょっと充電すれば、作業が可能な脳です。
それでいて、スペック面は全く妥協がなくAdobe RGBを100%カバー、色差ΔE <2に収められています。サイズ感もまさにモバイル向けという感じで、厚さ16mm、重量1.6 Kgと持ち歩く際にも疲れない重量設計になっています。
外出先でよく作業をする、パソコンをよく持ち歩くというクリエイターにお勧めの一台です。
MSI Prestige 15のスペック
色域 | Adobe RGB 100%(ΔE <2) |
グラフィックス | CPU内臓 |
CPU | Core i7-10710U (10,456) |
メモリ | 32GB |
ストレージ | SSD 512GB |
薄さ | 16mm |
重量 | 1.6 Kg |
バッテリ駆動 | 16 時間 |
その他 |
新たなクリエイティブの世界へ:ASUS ZenBook Pro Duo
ここまで紹介したクリエイター向けパソコンと一線を画すのがASUSのZenBook Pro Duoです。まさに新しいパソコンという形で、ノートパソコンでありながら、デュアルディスプレイという変わり者です。このスタイルがフィットするかはユーザーによって分かれるかと思いますが、画面を広く使いたいグラフィックデザイナーやビデオエディターには良いでしょう。
また、単に変わり者というだけでなく、スペックが化け物級にずば抜けています。DCI-P3カバー率100%はもちろんGPUにGeForce RTX 2060を搭載した最高スペックになっているのです。CPUも標準でCore i7ですが、上位モデルはCore i9-9980HKも選択することが可能です。
これだけ高スペックなので、値段も驚くほど高いですが、ビデオ編集やRAW現像といった使い方をする方にとって非常に快適なクリエイティブ環境を提供してくれるでしょう。
MSI Prestige 15のスペック
色域 | DCI-P3 100% |
グラフィックス | GeForce RTX 2060 |
CPU | Core i7-9750H (11,540) |
メモリ | 32GB |
ストレージ | SSD 512GB |
薄さ | 24mm |
重量 | 2.5 Kg |
バッテリ駆動 | 5.5 時間 |
その他 | デュアルディスプレイ |
まとめ
今までクリエイター向けパソコンといえば、ほぼMacBook Proしか選択肢がなかった状況ですが、2019年後半から各メーカーがこぞってクリエイター向けパソコンを発表しています。
YouTuberやミラーレス一眼を使ったフォトグラファーなどクリエイター市場に参入者が増える中で、クリエイター向けのノートパソコンが増えるのは喜ばしいですね。ディスプレイの美しさについては、有機ELやQLED、microLEDといった新しい技術が登場したことで、今後さらに競争が激化することでしょう。
2020年4月現在、筆者がクリエイターにお勧めのパソコンはと聞かれれば、MacBook ProかAcer ConceptDを挙げますが、今後新たなメーカーが参入してくることでクリエイター向けパソコン市場は面白いことになりそうです。